カフェを始めとする飲食店はほぼ全て、資本集約型のビジネスです。お店という初期費用が結構掛かる「資産」をそれなりの資本(お金)をもって取得し、その「場所」を使ってビジネスをする。そういうのを全般的に資本集約型のビジネスと言います。
つまり
大きな初期コストを、長期にわたる売上げから少しずつ「回収」して行く必要があるため、持続的な経営をしていく必要がある。という事です。イベント事のような単発ではないよ。って事。
では、一般的な飲食店の売上げと経費について。
売上げを100とした時、
原価(原材料費) 30
人件費(お店で働いている人全員) 30
家賃などの諸経費 20
減価償却費(上にあげた初期コストの回収)10
営業利益 10
という感じです。もちろん、業種業態によって上下しますが、だいたいこんな感じです。カフェの場合は、何を主力にするかにもよりますが、
原価 25
人件費 25
ぐらいまで落としつつ、
家賃などの諸経費を 30
にして好立地にて勝負した方が良い成績が出しやすい感じがします。このあたりからが、このお話で伝えたいところなのですが、仮に、食材にこだわり、サービスにこだわって、
原価35
人件費35
という割り振りで行くとすれば、家賃などの諸経費を10まで落とす必要があり、光熱費や消耗品を除いた「家賃に充てられる部分」は、6~7程度になってきます。
上記の数字に(万円)という単位を当てはめて考えた場合
人件費=給与=35万円ですから、1名+αくらいはなんとかなるかもしれませんが、果たして家賃7万円の物件(立地)において、どれくらいの人々が「カフェ」を必要としているでしょうか?
お店がお客さんに利用されるには、
A…利用したいと思った時に近くにある。
B…そのお店を利用するために、お客さんがわざわざ出向く
のどちらかである必要がありますが、 いわゆる好立地というのは「A」にあたり、食材やサービスにこだわるというのは「B」の状態にあたります。
もちろん、飲食店たるもの日々精進して美味しいメニューを提供していくための弛まない努力は必要なのですが、その結果としての「他店との違い」いわゆる「差別化」されている部分はお客様に伝えるのが難しい時代であると共に、よほどの「特別な何か(違い)」がないと、わざわざお客さんが足を運ぶのは難しいのが現状です。
「特別」という事と「高単価」は決して同義語ではないのですが一般的な顧客心理として、500円のコーヒーのために情報を深堀りしていく人は少ないが、10,000円を越えるような食事をするとなった場合は、現代ではスマホを駆使して出来るだけ満足度を高めようと労力を注ぐ方が多いと思います。
つまり、お客さんが時間をかけて「選ぶ」という作業をする「高単価」のお店や商品は、少々立地が悪くとも商品力やマーケティングの努力でその「違い」が伝わる可能性が高いですが、そもそも低単価のお店の場合はそこまで情報を求める場面も少なく、ちょっと座ってコーヒー1杯という早急的なニーズを満たしてくれるお店は、近くないとわざわざ行こうとしないのが本音かと思います。
たとえば。
とてつもなく美味しいコーヒーを淹れられるとしても、まず潜在的な「とてつもなく美味しいコーヒーを求めている人」の数がそれなりに居て、その人達が「美味しいコーヒーを飲みたい」と思った時に、自分のお店の情報にアプローチできる手段というのが必要となってきます。そして、自分のニーズとお店との距離=手間(コスト)とのバランスを検討し、まだ飲んだ事のない「とてつもなく美味しいコーヒー」を飲みに行くかどうかを意思決定する。という作業がお客さんの側で必要になってきます。
それを乗り越えて来るお客さんがそれなりの人数居て、初めてお店として経営が成り立つ。というのは、なかなかハードルが高いビジネスだと考えますので、序盤に書いたとおり、そのコストを立地の方に割り振った方が良いと思っています。
ちょっと数字管理の観点からは逸れましたが、カフェを開業し経営していくという事業を計画していく段階で、ステータスの割り振りではないですが、どの経費にウェイトを置くか?(お客さんにとってのメリットとして)比重を強めるか?というのを十分に検討する必要があります。
もちろん、どんなに立地が良くても不味ければ2回目はないでしょう。しかし、美味しくなくともやって行ける立地は存在しますし(基本的にリピートがない観光地のお店)、とても不便な場所で繁盛している飲食店もあります。
自分のお店が提供するメリット、技術、資本力などのバランス、お客さんのニーズ、などなどを総合的に検討し、事業計画を立案していく必要があります。
とは言っても、バランスだけ重視では特徴のないお店となってしまいますし、実質的に、本当の好立地というのはとても家賃や初期費用が高額でチェーン店並の資本力がないと契約すらできませんし、そもそも物件の空き情報が回ってくることもほぼないので、差別化を図りつつ、バランスを取りつつ。というのが重要になってきますね。
次回は経費の比率、損益分岐点などのお話です。
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