【開業・起業読本/4-3】交渉を有利に進める「ゲーム理論」実践編


神の見えざる手


アダム・スミスという人が書いた「国富論」という本の中に「神の見えざる手」という有名な言葉が出てきます。簡単に説明すると、


企業や店舗などが自由に競争する事により、

  • 消費者にとってお得な価格 かつ

  • 企業にとって利益が出る価格 になり

  • もちろん品質も消費者が満足行くレベルになる。(って原理が働くよ。)

企業や店舗は自分のため、消費者も自分のために行動すれば、自動的に(神の見えざる手によって)求める品質、求める価格に収束していくよ。という例えのフレーズだと思ってください。

それを念頭に、次に進みたいと思います。



あなたがもし、電気屋さんの店長だったら

あなたは、A店という電気屋さんの店長さんです。近隣に、B店とC店という同規模の電気屋さんもあり、最寄の「Z駅」からの距離はほぼ変わりません。


話を単純にするために、顧客達はA店~C店を利用するのに、安ければどこでも良いと考えている。アフターサービスなどは気にしない。という状況を想像してください。また、電気製品というのはメーカーが作って販売店で消費者が購入するのが通常なので、どこで買っても品質は一定です。また、お店の情報は一瞬にして見込み顧客に知れ渡るとして下さい。


さて、ここに話題の高性能掃除機「スーパーお掃除君」という商品があります。この「Z駅」近辺では、毎日300人「欲しい!」という顧客がおり、必ずA店~C店のいずれかで掃除機を購入します。



もちろん、価格は安い方が良い。と全ての顧客が考えています。それぞれのお店で、¥10,000という価格設定で売られており、本日の販売実績は、

・A店 100個 100万円 ・B店 100個 100万円 ・C店 100個 100万円

となりました。

一日目/A店の店長さんであるあなたは考えます。



「Z駅周辺の顧客は価格にとても敏感だから、9,900円という価格に設定すれば、全員A店で買い物してくれるんじゃないか?」「そうすれば、めっちゃ儲かるやん!」と。

次の日、あなたは「スーパーお掃除君 ¥9,900」というPOPを店頭に掲げ、販売を開始したところ、通常の3倍の売上げとなりました。まさしく狙い通りです。この日の売上げは、

・A店 300個 297万円 ・B店   0個   0万円 ・C店   0個   0万円

となり、あなたはウハウハですが、B店C店はたまったもんではありません。


さて、A店の店長さんであるあなたは、この掃除機の価格を明日は幾らに設定しますか?

B店、C店の店長さんもバカではありませんから、それぞれの店長さんの気持ちになって考えた上で、明日の価格を設定しなければなりません。


二日目/各店考えてきています

翌朝、開店と同時に各店の価格が明らかになりました。



・A店 ¥9,500 ・B店 ¥9,800 ・C店 ¥9,000


1日が終わって、結果はどうなったかと言うと、

・A店   0個   0万円 ・B店   0個   0万円 ・C店 300個 270万円


となりました。では、明日はいくらに設定すればお客さんを全員奪えるのでしょうか?と、A~C店の店長は考えます。


これがいわゆる「神の見えざる手」の効果です

A~C店それぞれが限界まで価格をおさえ、経費を節約し、ギリギリの価格に設定するようになる。さらに、実際は価格以外の部分でも顧客満足を見出し、

  • 駐車場を完備したり

  • わかりやすい説明のPOPがあったり

  • 店員さんのサービスが良かったり

  • 配送が無料だったり

  • 保証が付いていたり。 

と、各店が顧客満足を向上させるために日々努力している。また、実際には店舗の情報が見込み顧客全員にスムーズに行き渡る分けでもないので、少々の価格差なども大きな問題でもない。 というのが、自由競争の原理です。 ですが、これはほんの一面に過ぎません。


三日目/合法的に、合理的に状況を変化させる

こういった状況の中、キレもののB店の店長さんは考えました。

今までは3店が仲良くバランス取ってやっていたのに、A店が¥9,900という価格を設定してきたばっかりに、競争が始まってしまい、結果として3店共に利益を失う格好になってしまった。このままでは3店共に利益がほぼなくなって疲弊してしまう。どこかが潰れるまで競争を続けるのは厳しい。


また、以前のように3店共にしっかりと利益を出せる価格にするにはどうすれば良いのか?

もちろん、3店の店長が話し合いをして価格を設定すれば、それは「談合」という事になり「独占禁止法」という法律に違反してしまうかも。ルール違反であり、法的に、バレた場合顧客の信頼的にもマイナスです。


そんな中、B店の店長は起死回生のナイスなアイデアを思いつきます!その方法とは・・・


B店店長の起死回生のナイスなアイデア

次の日の営業前、B店のチラシがZ駅近辺に出回りました。そこには、


「B店 スーパー掃除機君 ¥10,000 もし、他店の価格がこれより安ければ同額まで値下げ対抗します! さらに、もし他のお店の方が安ければ、次回使える¥500のクーポンもプレゼントいたしますので、ぜひB店にてお買い求め下さい!」

A店の店長さんであるあなたも当然、営業前にこのチラシを目にします。

もし、あなたが¥8,000という価格設定にしても、その価格を見たお客さんがB店に行けば、¥8,000で掃除機が購入でき、さらにB店で使える¥500のクーポン券まで貰える。¥7,000にしても同じ事。。。


であれば、A店の店長さんはどうするのが「合理的」なのでしょうか?答えはもちろん、B店と同じ¥10,000という価格に設定するのが得策です。こうすれば、当初と同じようにA店で買う人、B店で買う人が分散するようになるからです。C店の店長もきっと同じように考えるでしょう。


晴れてZ駅近辺の電気屋さん3店では「スーパー掃除機君」は¥10,000という価格にて落ち着く事となりました。顧客は3店に分散して購入するようになります。さらには、他店対抗価格という、なんかお得な感じがするチラシも出回っているので、安く購入できている気持ちにさせられ、満足度も向上しちゃうかも、です。


B店の本当の思惑は何だったのでしょうか

B店の店長さんは、本当に他店対抗しようと思ったのでしょうか?多分、本当だと思います。と同時に、業界が疲弊するだけの値引き合戦に終止符を打って、3店共に共存しつつ利益を伸ばして行こう!という考えも裏にあったのかもしれません。本当の目的は見えませんが、B店の店長さんは、法律や社会的なルールを変更する事なく、他の2店と相談する事もなく、値引き合戦の応酬という状況をチラシ1枚、情報ひとつで変化させる事に成功し、自店のみならず他店の利益UPにも貢献したのは事実です。


もちろんこれは、A店(あなた)もC店も、合理的に考え行動する。という期待の元に実施された戦略でもあります。

このように、「他店対抗価格」が実施されるようになって、電気量販店は急速に成長しました。現在はあまり行われていない(行政の指導があったのかも)ですが、ゲーム理論的に非常に優れた戦略であった事は間違いありません。


まだまだゲーム理論についてはお知らせして行きたい事がたくさんありますが、本日はとりあえずこれくらいで締めておこうと思います。



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